弟、時々恋、のち狼
ロウは、その麗しい眉間をどんどんと険しくしていく。
口を引き結び、怒りにうちふるえているようにさえ思えた。
「ごめんなさい。そうだよね……」
過去も思い出してみても当然、ロウがこんなに怒るのは初めて。
ミイより人間寄りな部分のあったロウは、悲しみは理解していたようだったけれど、怒りとは無縁。
せっかく望んで人間になったロウに、アタシは、怒りなんて負の感情を背負わせてしまった……。
どうにも、落ち着かない。
このままじゃ、自己嫌悪で立ち直れそうにないし。
なんとか機嫌を直さなきゃ。
思うのだけれど、実のところ、アタシにはそもそも、なぜそこまで怒るのかがわからなかった。
とりあえず謝る。それしかできない。
戸惑っていることが顔に出てしまったのだろう。
ロウは物分かりの悪い生徒に物事を教え諭すように、大きなため息をついてからアタシの目を覗き込む。
「オレの言いたいこと、わかる?」
見透かされるような……実際ロウはアタシの頭の中調べてどのくらいわかってないか確かめたいんだと思う……居心地の悪さ。
目をそらしたいのに、その迫力がそれを許さない。
「隠すことは優しさじゃないよ。逃げ、だ」