弟、時々恋、のち狼

「嫌われないために真実を隠すんだから、逃げ以外の何者でもない。
自分が隠される側だったらどう思う?」


話したら心配させてしまうと思った。
ただでさえアタシは迷惑をかけてばっかりだから。
これ以上の負担をかければ、呆れられる。ロウの気持ちはアタシから離れてしまうかもしれない。
そう思った。

でも、もし、逆の立場なら……?


なんと言葉を尽くされたって、頼りにならない自分が情けない
不安をもたれる自分が、情けない。
きっと、そんな気持ち。

それに……。


「わかるよね?」


言い訳、じゃなく。追い討ち、だ。

ただでさえ目障りな相手。
……なのに、無理やりつきまとってきてたんじゃなくて。
実は求められて、そばにいた。

そんなこと、アタシなら、知りたくない。


「ごめんなさい……」


やっぱり、謝るしかない。
けれど、気持ちはさっきまでとは違う。
心の底から、湧いてきた。

アタシ、なんて自分勝手だったんだろう。


「ま、そういうこと」


シュンとなったアタシの頭に、温かな手が乗っかった。
そのまま、優しい手つきでポンポンと頭を撫でるように叩く。


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