弟、時々恋、のち狼
「じゃ、この話はおしまい!!
はい、仲直り」
うつむいたままのアタシの手をとり、ぎゅっと握った。
「で、本題ね。確かにラッラのアイディアでなんとかなるとは思うんだけど……」
こんな時にまで、思いやりに溢れたロウ。
その気持ちが嬉しくて、でも、自分の愚かさが一層身にしみて、泣きたくなる。
大好きだよ。
想いを込めて、つないだままの手を、強く握り返した。
「ありがとう」
温もりを感じるアタシの腕には、ぴっちりと編まれたミサンガが一本。
ラッラが出してきてくれた。
「さっきラッラも言ったけど、それは特別な糸で編んである」
きっとアタシの気持ちを感じてくれているのだろう。
ひときわ柔らかい笑みを浮かべて、ロウはさりげなく喋る。
「オレのお古で悪いんだけどね」
願いと、言霊を織った糸。
力を抑えるのではなく、気持ちを抑える。
以前、ラッラと出会ったばかりの頃にロウが使っていたもの。
溢れくる記憶と今の自分の間で自我を手放しかけたロウをつなぎ止めた、楔。
きれいにそのまま残っていたので、アタシはそれを借りることにした。
「……ううん、嬉しい。ロウのだと思うと、心強いし」
四色の糸が不思議な模様につながっている。
「そうですわぁ。ロウがイマこうしていることが、ナニよりのホショウですもの」
いつの間にかロウの膝にちょこんと座るラッラも、うんうんと頷いた。
誰かがそばについていなくても、アタシ一人で対処できるように。
とても強力な、御守りのような、もの。