弟、時々恋、のち狼

「ちょっとツカサくん……っ!!」


人の少ない横断歩道。
赤信号で止まったすきに、アタシはキッとツカサを睨んだ。


「手、放して」


やっとの思いで口にする。
正直アタシは、ツカサの透き通った冷たい瞳が怖い。

じろりと見られると、言いたいことの三分の一も言葉にできない。
息をするのも窮屈だ。


「いや」


なのに、あっけなく蹴散らさらるアタシの勇気。


「な……っ……いいから放して!!」


だけど今日は、アタシも引けない。

振り絞った声は思った以上に大きくて、ツカサも今度はアタシをじっと見つめた。
相反してそれるアタシの視線。


「あ……ごめん……。
あ、あの、アタシ……もう大丈夫だからっ」


きっと、ツカサは怪訝な顔をしているだろう。
……怖くて、確かることなんかできないけれど。


「大丈夫?」


意味がわからない。
そんな声。


「一緒にいてくれなくても!平気だから……」


「つまり?」


一気に気温が下がった気がした。



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