弟、時々恋、のち狼

「近寄るな、と?」


「え、いや、そんなわけじゃ……」


そんな、ズバリと……。

間違ってもアタシにはそんな強い言葉、言えない。
近寄るな、ってほどじゃないし。クラスメイトだし。


「なら問題ない」


はっきりしないアタシの返事に、ツカサは手を放すと……あろうことか、肩を抱き寄せた。

……なんてヤツ……。

怒られる、と怯んだアタシがバカみたい。


「これっ!」


身を捩りながら、アタシはなんとか、ツカサの目の前にミサンガを翳す。


「これがあるからもうイイの!」


ついでに、射るような視線と、目が合った。
…………ヤバ……。

今度こそ、怒らせた……?


でも、ここで黙ってしまうと、もう二度とチャンスはこない。
アタシは勢い任せに、決死の思いで喋り続ける。


「あ……だから……一緒にいるのが嫌とかじゃなくて……ツカサくんだってアタシにばっかり構ってられないだろうし……とにかくアタシは大丈夫だから……」


言ってて、どんどん混乱してきた。
なんでこんな、調子のイイ言い訳みたいなこと言ってるんだろう。

すっと細められた澄んだ瞳に、すべてを見透かされているようで……。


「わかった」


ふいにツカサがそう言った。


「しばらく様子を見るのも悪くない」


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