弟、時々恋、のち狼
--ミィに仕えた。
そんなわけない。
ただの人間が、こんな顔で世界を見たり、しない。
この表情は……
「教えて。あなたは何を知ってるの?」
まるで、遠い日のロウのようだ。
ふっ……と優しい眼差しをアタシに注ぎ、ツカサはまた、遠い彼方へと視線を戻す。
「……太古の昔。ミイとロウは己の身を封じる時に、人としての転生を願った」
それは知ってる。
だから、アタシと白羽先生がいる。
「不思議に思ったことはないか?なぜ、今の世にラッラがいるのか。彼女は人間だった。人ならば、輪廻の輪にあるのが当然」
「人、なら……?」
本当なら、ラッラは記憶をもたずに、真新しい命として生まれるべきだ、ということ。
使命ある身とは違うから。
「そう。じゃあ、なぜ、あの猫がいると思う?」
相変わらず遠くを見たまま、ツカサは淡々と続ける。
アタシは、しばらく考えたあと、結局、首を横に振った。
わからない。
ラッラが、あのラッラじゃない……ということだろうか?
「ラッラとロウ。俺とミフウ」
ふいに、ツカサがアタシを見据えた。
強く、底知れない瞳から目が離せない。