弟、時々恋、のち狼

パッと最後の画像が鮮明に脳裏を走り、同時に目の前に光が戻る。
いや……目の前が白くなったことでようやく、終わったのだと気付いた。そのほうが正しい。


知らず全身から汗が滲み出し、肩で息をする。
動悸の熱を冷ましていく優しい風に支えられながら、アタシはいつの間にかガクンと垂れていた頭を正面に向けた。


「今、のは?」


荒い息の下、やっとのこと、それだけ絞り出す。


「正しい記憶……の、一部……?」


アタシには受け継がれなかった、ミィの心。
その、断片。
すべてが混沌とした、破壊された絵。


「しばらく、ここにいよう」


ツカサは穏やかにアタシを見ている。

本当のことを知った今。
アタシは、その言葉に逆らうことができない。

アタシは、力、だから。
アタシこそが、憂いのもとだから。

人の身には重過ぎる過去。大き過ぎる力。
力だけが、アタシにはある。
制御する心は、ツカサの中に。

「……そうだね。いよう、かな」


家族は心配するだろう。
でも、アタシが近くにいない方が、きっと災難は減る。
アタシがいると……きっと、大変なことになる。

だから。使命も何も関係ない、この場所で。
例えそれが、逃げ、だとしても。

世に、災いの降らないように--。



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