弟、時々恋、のち狼

……どこ?

間違いなく落ちている体力のせいで、すぐに息があがった。でも、そんなことはどうでもいい。

ツカサがいなくなってしまったら……。

恐ろしくて、考えたくもない。

普段ツカサがよくいる部屋を片っ端から覗いていく。広い館とはいえ、部屋数には限りがある。


「ツカサ、どこ!?」


いない。
館の中、初めて行くところまで探したのに。

どうしよう。
動悸で、吐き気がしてくる。

途方にくれ、テラスで膝をついた。
景色は変わらず美しい。

……と。
かすかな笑い声が聞こえた。

遠く、庭の隅。


「ツカサ……」


良かった。
いた。

小鳥やリスを肩に乗せ、くすぐったいのだろう。声を立てて笑っている。




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