弟、時々恋、のち狼
あぁ、そうだ。
アタシは閉じこもってたんだ……。
足裏をくすぐる優しい緑に実感する。
ツカサの作ってくれた、何の苦しみもない世界。
そこで、なのにアタシは自分の苦しみにしがみついていた。
サッと風が吹いた。
心地良い感覚に気持ちが明るくなる。
「どうやった?」
声の届く、すぐ近くまで歩み寄った時、ツカサが心底不思議そうにアタシを見た。
何のこと?
見返すアタシも、きっと同じくらい不思議そうな顔をしていたと思う。
「これ」
と指差した先は可愛らしい影。
フワフワとした毛並みを揺らして動く、小さな、リスたち。
「生きてる」
肩を走る長いしっぽが頬を撫で、ツカサはくすぐたそうに目を細めた。
「そりゃ……生きてるんじゃない?」
言われている意味がわからず、アタシはきょとんと立ち尽くす。
可愛らしい小動物に気持ちは釘付けだ。