弟、時々恋、のち狼
「よく、庭にやってくる鳥たちに餌を与えては嬉しそうに眺めていた」
アタシが知らない、大昔のこと。
ツカサは、それを知ってる。
アタシが力で、ツカサが記憶。
こういうことなのか……と思う。
でも、それよりも何よりも、今ここでラッラの話しを始めたことに驚いた。
ツカサにとって、ラッラはロウと対をなすもので、敵視する対象なのだと思っていたから。
考えていたことが顔に出たのだろう。
ツカサが憂いを帯びた瞳を揺らした。
ふっと、小さく微笑む。
「言ったろ?オレもミィだ。ラッラを愛おしく思うし、ロゥを半身とも思う」
どことなく苦しげね表情に、目が離せない。
「それでもオレは今、男として産まれ、ミフウは女だ。誰よりも、魂の片割れであるおまえが欲しい。せっかく、こうして自由な命を得たのだから」
深い瞳が、熱を浮かべる。
ゆっくりと立ち上がると、そっと、アタシの頬に手を添えた。
「ミィは禁は犯せない。だからこそ、オレとミフウがいる。オレたちは愛し合うために、産まれた」
心が金縛りにあったように、動けない。
頭のどこか奥で「そうなんだ」という思いが湧き、甘い痺れがすべてに染み渡っていった。