弟、時々恋、のち狼

「愛してる」


とろけるような囁きとともに、きつく抱きしめられた。

アタシは、おかしいんだろうか。

あんなにロウを好きだと思ったのに、ツカサの言葉を、体が震えるほど嬉しいと思う。
この温もりが、幸せだと思う。


「オレの子どもを産んでくれ」


過激なセリフに、抱きしめられたまま目を見開く。
けれど、次第に、それこそがこの上ない幸せのように思えてくる。
ツカサに愛されて。
アタシたちが確かに存在した証拠を残す。


それが、正しいことだ。


ミィとロゥは愛し合う存在じゃあない。
許されることじゃない。

変わりゆくロゥを、ミィは不安に思ったことだろう。
その反面、ミィもまた、愛を知りたかった。
それゆえの、アタシたち。


「ツカサ……」


怖い人だと感じていた。
でも、怖いのはツカサじゃなくて、ツカサの抱える本当の記憶だったのかもしれない。

何の苦悩もなく平凡に過ごしてきたアタシはさツカサの苦しみが怖かったのだと、朧に思う。


「アタシは……」


何を言おうとしているのか。
自分でもわからないままに口が動いた。


その時。
鳥たちが一斉に飛び立った。

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