弟、時々恋、のち狼

久々に会うラッラは、大きさのせいだろうか、愛らしさよりも、威圧感を感じさせた。

恐ろしいような、妙な違和感が強くて、親しみをもてない。


「無理やり侵入した歪みだ」


ツカサの冷静さが、なんとかアタシの恐慌を押し留める。


「力が、暴走しかけてる」


それがどういう意味なのかはよくわからない。ただ、「暴走」という響きが不吉にこだました。


「探したよ」


ふいにすぐ近くで、別の声がした。
ギクリとしてあたりを見回すけれど、人影はない。


「……ロウ?」


忘れられるはずのない声。
聞いただけで、胸の内で喜びが弾けた。
なのに。
喜びと同じくらいの怖れで、体が凍りつく。


「残念。まだ、近くにはいけないんだ」


すぐ耳元で聞こえるのに、姿はない。
視線だけぐるりと回すと、遠く、ラッラの頭の上に、すらりとした人影を見つけた。


「ミフウ?」


硬直したアタシを、ツカサが不審そうに見る。
ツカサには、聞こえて、ない?


< 228 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop