弟、時々恋、のち狼
久々に会うラッラは、大きさのせいだろうか、愛らしさよりも、威圧感を感じさせた。
恐ろしいような、妙な違和感が強くて、親しみをもてない。
「無理やり侵入した歪みだ」
ツカサの冷静さが、なんとかアタシの恐慌を押し留める。
「力が、暴走しかけてる」
それがどういう意味なのかはよくわからない。ただ、「暴走」という響きが不吉にこだました。
「探したよ」
ふいにすぐ近くで、別の声がした。
ギクリとしてあたりを見回すけれど、人影はない。
「……ロウ?」
忘れられるはずのない声。
聞いただけで、胸の内で喜びが弾けた。
なのに。
喜びと同じくらいの怖れで、体が凍りつく。
「残念。まだ、近くにはいけないんだ」
すぐ耳元で聞こえるのに、姿はない。
視線だけぐるりと回すと、遠く、ラッラの頭の上に、すらりとした人影を見つけた。
「ミフウ?」
硬直したアタシを、ツカサが不審そうに見る。
ツカサには、聞こえて、ない?