弟、時々恋、のち狼

今アタシの前を通って行った子……気のせいでなければ、ほんのりと化粧をしていた。
個人的に、ああいう気の強そうなタイプは得意じゃない。
あんまり近づかないでおこうかな……。

アタシの靴箱の斜め下に来た子は……ポニーテールで明るい雰囲気。ちょっと話しかけやすそうかも。


あ、また誰か来た……。


外のまぶしい光を背に昇降口から入ってきたばかりの人影へと視線を動かす。

と。


アタシの目は、すっかり、その人物に釘付けになってしまった。


まるで、アタシの憧れのでできたかのような男の子。

無造作に流れる短めの髪は、艶やかな漆黒。

彫りの深い、陰さえ感じる顔立ち。

背はさほど高くはないものの、すらりと伸びた手足はとてもバランスが良い。


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