弟、時々恋、のち狼
ここに来る前、アタシにとって、ロウは王子様で、ツカサは悪魔のようだった。
けれど今は、まるで魔王とナイト。
そう感じるアタシは、一体、どうしたいんだろう。
どしん!
大きな物音を撒き散らしながら、ラッラが一歩、近づいた。
「ほら、もうすぐ」
クスクスと意地悪な声は、楽しんですらいるように聞こえる。
狂気が、垣間見える。
「大丈夫」
繰り返される囁きは冷静のようだけれど、アタシの肩を抱く手にはどんどん力がこもっているようだった。
「何があってもそばを離れるな。ミフウの力を、オレが引き出す。大丈夫、傷つけはしない」
アタシは力。
その言葉を思い出す。
それと同時に、あの、荒れ果てた学校を思い出した。自然と強張ってしまう気持ちを見透かしたように、ツカサは言葉を足した。