弟、時々恋、のち狼

「……良かった」


アタシの頭を撫で続けながら、ロウはひどく安心したように呟いた。

チクン。
また、胸がざわめく。

そうだ。
アタシはロウに何も言わずに逃げてきた。


「心配したよ?」


優しい優しいロウ。


ごめんなさい。
胸がつまって、それだけの言葉が言えない。


「穢れる」


低い苛立ちと共に、肩をぐいっと引かれ、つかさが間に割り込んだ。

とたん、ロウの表情が変化する。

表面は、笑ってる。でも、目は怒りに燃えていた。

般若の形相。

やっぱり、怖い。今の今までの愛しさが凍りついた。
< 233 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop