弟、時々恋、のち狼
睨まれてるのはアタシじゃない。
それでも、身の内を震えが走った。
燃えているのに、冷たい……。
「どうやって入った?」
「わからない?はっ。ひよっこはこれだから」
剥き出しの敵意で睨みつけるツカサを、ロウは包んだ敵意でからかう。
出で立ちはいつもの、センスの良いシャツとデニム。
アタシたちの方が、昔を彷彿とさせるゆったりした衣に身を包んでいるぶん、本当は違和感があるはずだ。けれど、服なんかじゃ誤魔化せない違和感をロウに感じてしまう。
アタシの大好きなロウのはずなのに、どこかが違う。
こんなに怒っているのを初めて見るからだろか。
「残念だったな」
負けじとツカサが鼻を鳴らす。
「ミフウはオレを選んだ」
勝ち誇ったように言い放つ。
さっきからツカサが言う言葉。
アタシ、ツカサを選んだの?ロウよりも?
自分ではよくわからない。
「怯えてるの、わかるだろ?」
守るように立つ背中に、アタシは確かにしがみついていた。
「あはははははっ」
ふいにロウが笑い出す。
心底おかしそうなその笑い方は、しかし、戦慄を誘う。