弟、時々恋、のち狼
重力の導くまま、地面が近づいてくる恐怖に思わず目をつぶる。
落ちている間に気を失ってしまえれば楽なのに……。
でも、これで争う理由は消える。ロウが、アタシの大好きないつものロウに戻ってくれる……。
とりとめもないことを思いながら、衝撃の瞬間を待つ。
アタシにできることは、これだけだから。
争いの根を断つ。
アタシさえいなければ、ツカサは力を振るえない。危険なことは、起こらない。
たぶん人としても、神に近い存在としても、この選択は間違いなのだろう。そんな気はしている。
それでも。
耳元を通り抜ける風の音が、低く太くなった。
「ごめんね、ロウ」
ホントは、一緒に生きて行きたかったよ……。
「愛してる……」
痛みとも灼熱とも、ただの衝撃とも感じられる大きな何かのあと、アタシは、すべてを失った。