弟、時々恋、のち狼


         ※


温かく優しい何かに撫でられた感覚で、目を覚ました。
触れられている箇所を「頬」だと認識し、それから、不思議な安らぎを感じる。

ゆっくりと目を開けたものの、まぶしい光に刺され、慌ててまた閉じた。

「まだダメだ」

思いのほかすぐ近くから聞こえた声。

………………ツカサ……?

どうしてだろう。すぐに名前が思い出せなかった。
けれど、とても安心する。

「お役目を投げ出して……一体どう言い訳するつもりだ?」

苛立ったように硬い声が、心配の裏返しだと今ならわかる。

ごめんね。

「……謝られても困る」

………………?

心の中での呟きに返事が返ってきたことに驚くと、さわさわと微笑む気配が伝わってきた。

「ミフウは相変わらず鈍いな」


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