弟、時々恋、のち狼

次第に遠のいていくツカサの気配に、心細くなる
濡れた感覚に、まだ閉じたままの瞳から涙が溢れているだろうことを感じた

どのくらい、そうしていただろうか

次第に、まるで命綱にでもすがりつくかのように、気持ちが頬の温もりへと向かい始めた
寂しくて凍えそうな心を、和らげてくれる……

「…………ロウ……?」

恐る恐る、そっと、目を開けてみた
一瞬またしても光が突き刺さるように思えたけれど、今度は柔らかな灯りが心地よく揺れている

「気が付いた?」

安堵したように囁いたのは、紛れもなくロウの声

明るさに慣れると、すぐ目の前に覗き込んでいる顔が見える

「ロウ……」

あぁ……いつもの、ロウだ……

アタシの大好きな、穏やかで甘い微笑み
魔王なんかじゃない、王子様のような、ロウ
< 249 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop