弟、時々恋、のち狼
全部夢だったんだ…………。
ぼんやりとそう思い、心の底から息をつく。
あんな夢なんか見て、アタシ、どうかしてる。
「「……良かった」」
……?
呟きがロウと重なった。
不思議に思い横たわったまま小首を傾げると、ロウが一瞬戸惑ったような顔になってから、苦笑した。
「痛いところはない?」
訊かれて、体を起こし……絶句する。
そこは、ツカサが作ったあの館。
乱れた跡はまったくないけれど、床にしかれた絨毯の模様が替わっていた。
「アタシ……」
「思い出した?」
優しく背中を支えてくれながらそっと囁かれた問いに、青くなる。
「なんで……アタシ…………?」