弟、時々恋、のち狼
虹
キーンコーンカーンコーン
響いたチャイムに顔を上げる。
もうこんな時間だとは、気付かなかった。
ふと見れば校庭のあちらで、部長が集合の合図をかけていた。
「ぼーっとするな。行くぞ、ミフウ」
後ろから頭を叩かれ、先に駆けていった背中に抗議する。
アタシは急いで自分のノルマのハードルを重ね持つと、その後を追いかけた。
「多く持ってくれたんだね。ありがと」
集合場所で、先輩にバレないようこっそりとその脇腹をつついた。
文句を言おうと思っていたのに、なんだかんだで優しいから、困る。
「ツカサ、今日の宿題一緒にやらない?」
「……どうせ英語だろ?」
「そのとおりー。教えてくれる?」
「はぁ……。帰りにどこかのファーストフードでやってくか」
帰国子女のツカサは初めはとっつきにくかったけれど、一緒にハードル走の練習をしているうちにすっかり打ち解けた。
この種目の1年のはアタシたちだけだから、仲間意識が余計強いのかもしれない。