弟、時々恋、のち狼
この学校に入って良かったなぁってしみじみ思う。
「わっ」
「何やってんだ」
交差点のど真ん中で、ほどけた靴ひもを踏んでガクンと転ぶ。
「信号変わるぞ」
自然に差し出されたツカサの手を掴んで立ち上がり、残り半分程の横断歩道を駆け抜けた。
……………………あれ?
ふいに湧き上がった違和感。
アタシ、この手を知ってる。
アタシを守る、ツカサを覚えてる………?
こんな、ありふれた場面じゃなくて……。
『ソンナコトナイ』
いや、気のせいなんかじゃない。
『カンガエルナ』
ううん、思い出したい。
「ツカサ……?」
呼べば振り返る愛想のない、キレイな顔。
「ツカ、サ……」
怪訝そうなその表情に、見たことのないはずの優しい笑顔が重なった。