弟、時々恋、のち狼

「何?ちょっと、美風の顔赤いよ?熱ある?」


ゆっくり振り返ると、にこやかな詩織の顔がすっと曇った。


「……えっ?大丈夫!!」


怪訝そうに覗き込まれ、思わず上擦った声が出る。


「さっ!行こっ」


まだぶつぶつと心配してくれている詩織の背をちょっと強引に押して、階段を上る。


さっきのヒトは……職員室、かな。


2階の渡り廊下の向こう、南校舎にあるらしい職員室に、アタシは当然ながら、まだ行ったことがなかった。
1年生の教室が並ぶ北校舎の2階から、広い窓ごしに探そうと思っても、正直、見当すらつかない。

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