弟、時々恋、のち狼
朝の陽が明るい廊下の、一番手前の教室で、詩織が中を指差した。
「アタシここ。
転入生、あとで見に行くね」
ウキウキと言う声は、しかし、さっきからアタシの耳を通り抜けるだけだ。
ぼんやりとしたまま、「またね」と手を振る。
アタシの教室はまだ先だった。
アタシと……あの、男の子の、クラス。
「改めて……」
耳の奥では、繰り返し、彼の声が響いている。
不思議な心地よさに、アタシは、
「これが一目惚れってヤツなんだ……」
と、うっすら、思った。