弟、時々恋、のち狼
担任のおばちゃん先生の説明によれば、ツカサくんの両親はまだ外国にいて、彼だけが進路の関係で先に日本に戻ってきたらしい。
しかも昨日帰国したばかりだから、まだ荷ほどきもしていない。
日本に慣れて生活が安定するまで、少なくとも今週いっぱいくらいは、不定期な登校になるのだそうだ。
優秀そうな帰国子女の進路を、こんな高校にまかせていいのか。
とは思うけれど、そういうツッコミは、まぁ、おいといて……。
黒板に名前を書かれむっつりと立つ姿は、帰国子女だとかどうだとかよりも、ただ純粋に近寄りがたかった。
「江藤司です。
……よろしくお願いします」
素っ気ない、無愛想なあいさつ。
まるで台本を棒読みしているかのようだった。