弟、時々恋、のち狼
「えー、それでは」
先生がしゃべり始める。
ヤダな……あんな失敗、ツカサに見せちゃったなんて……。
考えると、情けなくて泣きたくなる。
誤魔化しようもない、あの状況。
愚かな……自分。
アタシはこっそりと、斜め前の方にいるだろうツカサの様子をうかがった。
あの日以来、正直、アタシは彼を避けている。
不可思議な態度がなんとなく恐ろしく感じられたし、何より、妙に緊張して近寄れない。
いくら変な雰囲気を醸し出す謎の人物……とは言っても、やっぱり、カッコイイものはカッコイイ。
アタシは初めて会った日の気持ちを忘れられずにいた。
……今だって、姿を見ただけでドキドキする。