弟、時々恋、のち狼
こんなんじゃムリだよ。逃げられっこない。もっと……!
けれど、それに気付いたのか、ふいにアタシを抱きすくめる力が弱まった。
…………?
見上げると、澄んだ瞳。
目が、合った。
ぅわ……。
ただでさえ熱い頬がさらに赤くなるのが自分でわかる。
ありえない……ユメ、みたい……。
アタシだって、一応は女の子。
ずっと、ステキな出逢いをユメ見てきた。
あがり性でお世辞にもモテるタイプじゃないけれど、いつかきっと…………なんて、寝る前によく、想像してた。
でも。
ホントにこんなことがあるなんて……。
そこにいるのは、話しに聞く不審者なんかじゃあなくて。
まさにユメの中の、王子様。
吸い込まれそうなダークブラウンの瞳は、陽の光で猫のように色を変える。
柔らかな眉、高すぎない形のいい鼻、人懐っこそうな印象を与える大きめの口。
無造作にさらりと流された長めの髪は、時として金色に輝いて見えた。