弟、時々恋、のち狼

「オレのこと、キライ?」


唐突に、悲しげな瞳に射すくめられ、言葉を失う。


そんな……捨て犬みたいなカオしないでよ……。


胸がしめつけられた。

かわいい。

大学生くらいだろう年上の相手なのに、そんな思いすら湧いてくる。


「キライ……じゃ、ない、です……」


しぼりだした声。
かすれた言葉に、自分でも何を言っているかわからなくなってくる。

そんな、すがるような目で見られたら……。

逃げなきゃならないのに……。


「あの……でも…………」


何?
とでも言うように、アタシを見る整った顔。
きょとんとした表情は子どものように純粋で、かわいい。


この数分だけでアタシの心臓は、1年分くらい働いてしまったかもしれなかった。
妙に息苦しいし、このまま気を失ってしまいそうだ。


……それとも……全部、夢、なのかも……?

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