弟、時々恋、のち狼
「しっ!!」
さらに言い募ろうとしたその時、突然ラッラが鋭い声をあげた。
耳をピンと立て、遠い何かを聞き取ろうとするかのように、意識を集中させている。
一分……二分……。
ラッラの張り詰めた緊張感が、やけに時間を長く感じさせる。
「アタクチ、ロゥのトコロにイってマイりますわ。
ミィとのハナシはまたコンドにしましょう」
実際にはほんの十秒程度だったかもしれない。
ラッラは先程と同じくらい唐突にそう言うと、窓にかけ寄った。
「あ、そうですわ」
開けてくれという仕草に近寄ると、何を思いついたのか、アタシの目をじっと見つめる。
クラクラするほど透明なアーモンドアイ。
窓を開けながら、アタシは小さなめまいを感じた。
瞳に……窓に……何かに吸い込まれてしまいそう……。