弟、時々恋、のち狼

ふぅ。

ほんの小さな息をつき、ロウが、困ったようにわたしを見た。

わかってる。
ラッラの想いの強さが、彼の体を蝕むのだろう。

そこここに悪意の満ちた昨今だからこそ、馴染み深い者の抱く負は、余計、『記録者』である彼には重く響くに違いない。

この部屋には今や、深い悲しみとともに強い憎しみが溢れている。
それは、わたしの中の『纖滅者』の血をも冷たく沸き立たせるほど、鮮烈に。


「お飲みなさいな」


壁にしつらえた白い岩場の清水を、丸めた葉に注ぎ、ラッラに手渡す。
きっと、もう何日も泣き続けているに違いない。
腫れたまぶたが、この薄暗い洞窟のような部屋の中でもはっきりとわかった。


「わたしたちはこの生であなたと出会えたことを、本当に嬉しく思っていますよ」


かわいそうなラッラ。

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