弟、時々恋、のち狼
幾度もの生を受け、今回初めて、わたしたちは胸の痛みというものを知った。
創世の時から、ただすべてを記録し、裁きの時を待つ私たち。
感情もなく、疑問も抱かず。
「我らは、人と永く関わり過ぎた」
気持ちを落ち着けたラッラの去った扉を、彼は穏やかに見つめていた。
「立場を忘れたつもりはないが……少なからず、交わり過ぎた」
寂しいのだろう。
思った。
この気持ち。
人から学んだ、気持ちというもの。
「彼らにとっても、わたしたちにとっても、ということね」
光沢を放つ白い衣をゆらし、頭一つ分大きな彼を見上げる。
「そうです。
姉上」
ふいに、柔らかな感覚を頬に覚えた。
「?」
ロウの意図が理解できず、私はただ、その腕の中で静かに言葉を待つ。