弟、時々恋、のち狼

人々が愛情を示すために、こうして腕を回すことは知っている。


「ラッラにもこうしてあげれば良かったのだろうか」


人ならぬ身を大切に想ってくれる、優しいいのち。


「私は……姉上。
一度で良いから、人として生まれてみたい。そして、生きる喜びを知り、感情というもので体を満たしてみたい。
私は……愛情というものを、知りたいのです」


家族の愛。
友人への愛。
恋人への愛。
見知らぬ誰かへの思いやり。

ラッラのように。


「我ら……思い出さずとも済む日がくるのだろうか……」


すべての行為を。

すべての罪を。

この世界すべての……。


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