弟、時々恋、のち狼
「その時には、こうして姉上を抱きしめよう。
心というものを込めて、感謝しよう」
キラリ、彼の目が光るものを見つけた。
床の上に残された、一粒の鈴。
腕飾りにたくさんついた、透明な、一つ。
ロウは丁寧に腕をほどき、そっと私から離れるとそれを拾った。
白い衣の長い裾が、音もなく床をこする。
「持って行っても……?」
どこに、とは言わない。
「えぇ」
弟の真摯な瞳に、頷き返す。
不思議なことに、かすかな笑みが胸に湧いた。
「持って行きましょう」
やはり、私たちは同じことを思っている。
ならばーー。
鈴を握る白い手に、そっと自分の手を重ねた。
今はただ、祈ってみよう。
果てしない時を渡るこの命。
初めて……神へと、祈ってみよう。
自我の、芽生えることをーー。