弟、時々恋、のち狼
       *


「……でぇあるからぁ」


4時間目の、数学。
ただでさえお腹がすいて集中できないこの時間。


ーー……っ!!


漏れそうになる悲鳴を必死にこらえた。

アタシの耳の中でだけ、轟音が鳴り響く。

目の前の……黒板から先生を通り抜け、荒れ狂う波がアタシをめがけて襲いかかってくる。


波濤が、砕けた。


……!!
……助け……て……


また。
幻。


…………大丈夫。
わかってる。
全部、幻。


だから、変に思われないよう、精一杯、平静を装う。

大丈夫。
何も、ナイ。


空腹と眠気に襲われてるはずの時間……アタシは、繰り返しそう自分に言い聞かせていた。


一時間に一度、くらいだろうか。
ここ数日、そのくらいの頻度で、幻影がアタシを襲う。


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