弟、時々恋、のち狼

……ぼんやりと。
目が机の上の教科書をとらえる。だんだんと、自分が下を向いていることに気づき……。


「では今から配るプリントを宿題とします」


無意識に伏せていた顔を上げると、ちょうど、先生が教科書を閉じたところだった。


プリントなんか、わかるわけない。
ただでさえ苦手なのに、全然聞いてなかったもん。

プリントをまわし、授業終わりの礼をして、アタシはぐったりと大きく息をついた。


……疲れた……。


一体、いつまで続くんだろう。

昼には恐ろしい幻覚。夜には、内容はあまり覚えていないけれど、切なく悲しい夢が、アタシを待ち受けている。


ラッラに相談してみようかな。


思うのに、肝心のラッラはあれ以来まだ帰ってきていなかった。

すぐ帰ってくるって言ったのに……。


< 79 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop