弟、時々恋、のち狼
呼吸が落ち着いてきたのがわかった。
触れる温もりに、安堵が溢れる。
ふぅ
肩、腕、胸……徐々に緊張がとけていく……。
「もう、いなくなりましたよ」
ふいに耳元で聞こえた、声。
せっかく和らいだ体が強張る。
ラッラじゃ……ない。
確かに、澄んだ少年の……。
弾かれたように目を上げると、すぐ隣にツカサがいた。
険しい表情で通路の先を睨みながら、片方の手をアタシの肩に置いている。
「っ!!
江藤くん!?」
驚きに裏返った声が飛び出すのと同時に、カッと顔から火が出る。
なんでツカサが!?
しかも、まさかこんな妙な場面を見られてしまうなんて。
何もない廊下で一人ガタガタと立ち尽くしていたアタシは、さぞかし奇妙に見えたことだろう。
純粋な恥ずかしさに、涙が出そうだ。
なんだってこんな場面ばっかり。