弟、時々恋、のち狼
やっぱり関わるんじゃなかった。

しかし、思ったところであとの祭りだ。


ヤバい……よね?
かなり。


相手は、完璧、キレてる。
アタシはこのまま、このよくわからない相手にボコボコにされてしまうんだろうか……。
下手したら「白昼の通り魔」なんて見出しで騒がれたりして?


間近に迫った顔は整っているからこそ、怒ると妙に残忍そうな印象になる。
さっきまでの甘いムードはどこへやら。
ひたすらに、恐怖が募った。


「許せ……ない……」


いまにも瞳が赤く染まりそうだ。
形相がかわる、とはこういうことを言うのだろう。



ーーもうダメ!!



思った、その時。


「チチッ」


何かが目の前を横切った。

どこか下の方から、青年の肩を通り……頭へと。


「ぃてっ」


突然、今にも噛みつきそうだった表情が、あっけにとられたように歪んだ。


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