弟、時々恋、のち狼

指先が冷えていく。
体の奥から震えが湧いてくる。


「大丈夫だよ」


そっと、温かい手がおでこに触れた。

ふぅ。

知らず緊張していた手足の力が抜けていく。
ぬくもりがじんわりと広がっていくようだ。

でも、脳裏の嫌な映像が消えたわけじゃあない。


大勢の悲鳴。

瓦礫の山。

涙。


目を閉じたまま、場面はどんどん進んでいく。

夜に見た夢。

昼に見た、夢。


「泣かないで」


思い出せる限りを思い出し、そのいくつかが繰り返されるようになった頃、ロウは自分こそ泣き出しそうな声でそうつぶやいた。

アタシは、言葉にも声にも驚いて目を開ける。


「……っ!!」


一瞬、目に映るものがわからなかった。


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