弟、時々恋、のち狼
刹那、それがロウの顔だとわかる。
突然、コーヒーの香りの吐息が、甘やかに感じられた。
手だと思ったもの。
それは、アタシのおでこにあてられた、額だった。
まるで、熱でも計るかのように……。
想いを、読み取ろうとするかのように……。
っ!うわぁぁっ!!
気持ちが背後にガタンと跳びすさる。
気持ちだけなら……驚きのあまり、学校の敷地外まで一瞬にして避難している。
現実の体が、真っ赤に凍りついてしまって1センチも動けていないのが悔しいほどだ。
「…………ミイ?」
目の前で、切なげに瞳がゆれる。
「……思い、出したんだね……?」
ロウの言葉は、喜びに満ちているようでいて、不安が溢れていた。
「………………たぶん……少し」
アタシは、小さく、コクンと頷く。