弟、時々恋、のち狼
視線は、つい、逸らしてしまった。
見つめ合う勇気が足りない。
でも、頬のほてりはずいぶんと引いていた。
窓から入る陽の暖かさを感じるだけの、ほんの少しのゆとりもある。
「もしかしたら……です」
ーーアタシは、ミイなのかもしれない。
ここ数日、ぼんやりと思っていた、重大なこと。
アタシの運命を変えるかもしれない、一大事。
何かをはっきり思い出したわけじゃないし、確信だって、実感だって、ありはしない。
でも。
たぶん、この夢の正体は「記憶」、なのだ。
いつだって現実離れしていて、下手な映画を見ているような夢だけれど。
ただいつだって、その視点は一緒だった。
いつだって、夢の中でアタシはミイだった。
「そっか」
ロウはほんの少し苦しそうに、華やかな笑みを浮かべた。