秘め恋*story5~車の中で…~
*story5
~車の中で…~
ーーーーーパシッ。
「ごめんなさいっ、今のは私の言い方が良くなかったわよね。」
ピリピリと痛む右頬を押さえながら、冷めた目で見下ろす夫に必死に笑みを作りながら、謝る。
今のは私が悪かったの。
うん。きっと、そう。
「俺、お前の為にこんなに頑張ってるんだ。」
「うん。うん。そうよね。
本当に感謝してるわ。」
「それなのに、俺は休みの日にのんびりもしたらいけないのか…」
「…っちが。」
ーーーーードスッ。
蹴られた右わき腹が痛い。
「違うの。一緒に散歩できたら、
いいなぁって思ったのっ。仲良くしたいの。」
日曜日、休みだった夫はテレビを見ながら寝転んでいた。
天気が良かったからつい、私は部屋の片付けをしながら、口にしてしまった。
『天気がいいわ、
家の中にいるのが勿体ないくらいよ。』
なんて事言ってしまったんだろう。
そして、夫はテレビを見て笑っていたのが急に恐い表情に変わり…
私の頬に平手打ちした。
きっと、休みだからって家でゴロゴロするなと私に言われたと思ったんだ。
今のは私が悪い。
言い方が悪かった。
夫は悪くない。
「そうか…悪かった。
ごめん、一緒に散歩行こう。」
急に優しい口調に戻った夫は、踞った私を抱き締めた。
夫の体温を感じて、ホッとする。
いつもこう。
抱き締められると、あぁ愛されてるって感じるんだ。
夫は私を愛してる。
打ったのも、蹴ったのも…私が夫の愛に気が付かないから…私が馬鹿だから。
それから、夫と2人散歩へ出掛けた。
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