秘め恋*story5~車の中で…~
*story5

~車の中で…~






ーーーーーパシッ。





「ごめんなさいっ、今のは私の言い方が良くなかったわよね。」





ピリピリと痛む右頬を押さえながら、冷めた目で見下ろす夫に必死に笑みを作りながら、謝る。



今のは私が悪かったの。
うん。きっと、そう。





「俺、お前の為にこんなに頑張ってるんだ。」




「うん。うん。そうよね。
本当に感謝してるわ。」




「それなのに、俺は休みの日にのんびりもしたらいけないのか…」




「…っちが。」




ーーーーードスッ。



蹴られた右わき腹が痛い。




「違うの。一緒に散歩できたら、
いいなぁって思ったのっ。仲良くしたいの。」





日曜日、休みだった夫はテレビを見ながら寝転んでいた。


天気が良かったからつい、私は部屋の片付けをしながら、口にしてしまった。



『天気がいいわ、
家の中にいるのが勿体ないくらいよ。』




なんて事言ってしまったんだろう。



そして、夫はテレビを見て笑っていたのが急に恐い表情に変わり…



私の頬に平手打ちした。



きっと、休みだからって家でゴロゴロするなと私に言われたと思ったんだ。




今のは私が悪い。
言い方が悪かった。




夫は悪くない。




「そうか…悪かった。
ごめん、一緒に散歩行こう。」




急に優しい口調に戻った夫は、踞った私を抱き締めた。



夫の体温を感じて、ホッとする。



いつもこう。
抱き締められると、あぁ愛されてるって感じるんだ。




夫は私を愛してる。
打ったのも、蹴ったのも…私が夫の愛に気が付かないから…私が馬鹿だから。





それから、夫と2人散歩へ出掛けた。










< 1 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop