秘め恋*story5~車の中で…~
「柳教官…」
私が口を開いたと同時に、
「これ…」
「え…」
突然、グッと柳教官に手を引かれたと思って驚いたのもつかの間、柳教官の目線が私の手首に向いてるのに気付き、ハッとして手を引っ込めようとした。
だって、手首には昨日夫に強く掴まれて赤紫色になった痕がある。
「これ、どうしたんですか。」
引っ込めようとした私だけど、柳教官はその手を離そうとしてはくれない。
手を掴んだまま、柳教官はキッとした表情で真っ直ぐ私を見つめた。
何で柳教官がそんな事聞くの?
「ちょっと…ぶつけちゃっただけで…」
「ぶつけて、人の指の形に痣が出来るのか?」
「え、」
必死に笑ってごまかそうとする私の言葉をばっさりと跳ね退けた。
いつの間にか、敬語じゃなくなってる柳教官。
「それはっ…」
「旦那にやられたのか?」
「…!?」
「前の火傷も旦那か?」
な、何で柳教官がそんな事…
「ち、違いますっ。」
私は、戸惑いつつも否定した。
確かに火傷も痣も、夫が原因。
でも、それは夫が悪いわけじゃない。
夫の気持ちに応えられてない私が悪い。
「柳教官には関係のないことです。
これは、私達夫婦の問題です。
ほっといてください。」
一気にそう告げると、私は車の方へ足早に逃げた。
でも、それはドアを開けるまでに阻止されてしまった。
「俺にも関係ある。」
「え?……ーーーーーッ。」
そう聞こえたかと思い、気づくと後ろから柳教官に抱き締められていた。
ど、ど、どういうこと?
何で?
どうして柳教官がっ?
一瞬にして頭がパニック。
そんな私をよそに柳教官は抱き締めたまま、こう言った。
「その旦那から奪いたいから、
俺にも関係ある。」
え?
旦那から、奪いたい?
「や、やな、柳きょうか…」
「落ち着け。とりあえず、車に乗ろうか。」
パニクる私とは反対に落ち着いた様子の柳教官は、スッと私を離すと運転席へ乗り込んでしまった。
そうなると、必然的に私は助手席へと乗り込んだ。
抱き締められた時の感触がまだ残っていて、
ドキドキが治まらない。