秘め恋*story5~車の中で…~
「あの火傷も旦那がやったのかもしれない、そう聞いた時から…いや、あの時俺が聞いた時の君の悲しい目を見た瞬間、思った。
ーーーーー俺が守ってやりたいって。」
視線を感じてそっと横を向くと、柳教官は力強く…真剣な顔つきで私を見つめていた。
視線が交わり、そらすことができない。
じわじわと心が熱くなってくる。
ダメ…ダメ…
必死に自分を抑え込みながら、私は辛うじて口を開いた。
「真奈美が夫の事を何て言ったかは、知りません。でも、夫は私を愛してくれています。
あなたに…柳教官に守ってもらう必要なんて………ッ。」
必死に繋いだ言葉も、強引なくらいの抱擁で
すぐに言えなくなってしまった。
抵抗もできないまま、頼りがいのある優しい温かさを感じた。
「教官って呼ばないでくれ。頼む…」
耳元で囁かれた寂しそうな声に、思わず胸が締め付けられる。
「愛してる人に手をあげるのが愛なのか?
自分の安心のために妻を脅して従わせる、
それは愛してるっていうのか?」
「そ、れは…」
柳さんは淡々と、私に問いかける。
その言葉に私は戸惑うことしかできない。
だって、だって…
夫は私を愛してくれてる。
それを伝えるのが不器用なだけ。
ちょっと痛みか生じるだけ…
「そんなのは愛じゃない。
愛してるなんて言わない。」
そんな柳さんの声を耳元で聞きながら、私は無意識で涙を流していた。
泣いてる私に気づいた柳さんがそっと身体を離す。ふいに切なく、寂しくなる。
「俺ならそんな涙、流させたりしない。」
鼻と鼻が…唇と唇が、触れてしまいそうになるくらいの距離で柳さんは私を見つめる。
涙でかすんでよく見えないけど、
柳さんの優しくて綺麗な表情に惹き付けられるのは感じる。
夫に見つめられてもこんな気持ちにはならない。
「柳さん…」
目を瞑った。
頬には伝って落ちる涙の感覚…
そして、唇には優しい熱の籠ったキス…
そっと左の頬に添えられる柳さんの大きな掌。
安心させるように何度も何度も触れる唇。
私の心はもう気づいてしまった。