先輩と私~ピュア系一途×爽やか系おおかみ~
二人きりの文化祭
「さて、それじゃ回るとしますか!」
「え…?」
ポンと手を打って先輩はそう提案したが、今しがたの出来事で思考がピンク色な私は、先輩の言っている意味が分からず聞き返してしまった。
すると、私の返事に驚いたのか、先輩は首を傾げながら言った。
「え?って、穂和ちゃん、学祭回んないの?メイドやってたから忘れちゃった?」
「…あ!」
そうだ…!午前中のシフトがお互い終わったから、午後一緒に回る約束してたんだった!
ようやく思い出した私に、先輩はにやりと笑う。
「さっきのキスで全部忘れたの?」
その一言に、カッと顔を赤らめる。
「そっ…そういうわけじゃ…!!」
「忘れたってことは、もう一回やったら全部思い出すの?」
先輩がどんどん顔を近付けてくるから、私はずりずりと後ろへ下がっていくしかない。
─ヒタ…
「─っ!」
腕が触れた冷たい壁の感触に、追いつめられてしまったと悟る。
あまりの近さに、正面を向いていられなくなった私は、咄嗟に顔を横に背ける反抗を示したが、全く意味はなく、直ぐに先輩の手により、向かい合わせにされてしまう。
「穂和ちゃん…」
先輩の柔らかい声が間近で聞こえ、思わずふるっと体が反応した。
「…俺、」
「…食べたい」
─ビシッ。
「たこ焼き」
─ホッ。
「…と、穂和ちゃん」
─ビシッ。
「ちょっとー…いくらなんでも素直すぎない?穂和ちゃんらしいといえばらしいけどさぁ」
私のあからさますぎる反応がお気に召さなかったのか、先輩はすっかりいじけモードになってしまった…。