先輩と私~ピュア系一途×爽やか系おおかみ~
─コンコンコン。
「失礼します。2年笠幡です。理事長からのお呼びだしを受けて参りました」
豪華な装飾の施された扉の手前で、要件を伝えると、部屋の奥から静かなテノールの声が聞こえた。
「どうぞ」
再度入室の断りを入れ、扉を閉めると、唐突に質問を投げかけられた。
「どうなんだ」
「どうなんだ…なんて言われてもねぇ。心当たりが多すぎてどれか分からないんだけど」
先程のまでの堅苦しい雰囲気は、部屋に入ったのと同時に、見せ掛けの敬語と共に捨て去られた。
「ははっ。まあ、そうだろうな…」
苦笑しているあたりから、どうやら俺の苦労は理事長である親父にも届いているらしい。
「理事長の息子ともあれば、色々な輩が集まってくる…そんなこと、猿だって予想つくよ」
「ああ。負担をかけてしまって本当にすまない…」