先輩と私~ピュア系一途×爽やか系おおかみ~
でも、もうそんな壁はない。
ほんの一部にすぎないんだろうけれど、それでも、私にとってはすごく大きいもの。
先輩が壁を壊したなら、私は歩み寄らなきゃ。
おずおずと、でも確かに先輩の体を抱きしめる。
「紘先輩…私は紘先輩が好きです…あなた自身が好きなんです……初めてあったときも、今も、その思いは変わりません」
「穂和…」
不意に呼び捨てで呼ばれ、ドキンと胸が高鳴る。
「だ、だからなんだという話なんですけど…っ」
うう、もっとちゃんと考えをまとめておけば良かった…。
少し後悔していると、紘先輩はそっと私の頬に手を置き、おもむろに呟いた。
「…俺も」
ハッとして顔を上げる。
「俺も、穂和自身が好き。穂和だから好きなの」
そう言って笑った紘先輩の笑顔に、陰りは一つもなかった─。