先輩と私~ピュア系一途×爽やか系おおかみ~
「─じゃあ、明日の放課後からここに通うように!!」
暫くの甘い時間の後、先輩はまたにっこりと笑ってそう言った。
明日の放課後から…ってことは、毎日先輩に会えるってこと…?
先輩の言葉に感動しきった私は、そのことを噛みしめるように、力強く返事した。
「っ、はいっ…!!」
「うん、いい返事だね。…じゃあ、そろそろチャイムなるから教室帰ろっか」
「はいっ…」
二人で部室を出て、一年と二年の階の分かれ目の階段まで歩いたところで、ふと思い出したように先輩が振り向いた。
「…そういえば、お昼ご飯、食べ損なっちゃったね…ごめんね」
「い、いえ!!お構いなく!」
というか、今あった色んなことでもうお腹いっぱいです。
…とは言わなかったが、先輩が申し訳無さそうな顔をしていたため、慌ててフォローした。
「えっ、えと本当に大丈夫ですよ!それに、食べてないのは先輩も一緒ですし…私の方こそ先輩の時間を潰してしまって…すいません……」
…そうだ。私の用件がなければ先輩はお昼ご飯食べられたのに……。
なんだか自分もどんよりしてしまい、自分で自分を追い込んでしまった。
すると、そんな様子を見ていた先輩は、何かを閃いたのか、ちょっと待っててと言い、走って部室へと向かい、しばらくしてから、また走って私の元へと戻ってくると、はい、と私の手に何かを置いた。
「…これ…クッキー…ですか?」
手のひらの上の小さな菓子袋を見て、私がそう尋ねると、そ!と頷かれた。
「まあ、もう予鈴なっちゃうし、これぐらいしか食べられないと思うけど…」
「…あ、ありがとうございます!!」
嬉しい…っ。
クッキーより何より、先輩の優しさと、それに先輩からもらったということが私にとっては一番嬉しかった。
「穂和ちゃん…クッキーそんなに好きなの?」
が、先輩にそんなこと分かるはずもなく、ただクッキーに馬鹿喜びしている人みたいになってしまっていることに気づき、カッと赤面したが、本心を言える筈もなく、そういうことにしておいた。
「…おっと、そろそろ行かなくちゃね。それじゃ、またね」
今度こそ先輩と別れ、先輩の背中を見送った後、私は一人教室へと歩き出した。
「先輩………」
今あったことは夢ではないのだろうか…。
歩きながら、ふと先程までのことを思い返してみる。
─トクン、トクン
思い返す度に、暖かい鼓動が体全体に響き渡る。
先輩が触れられた手が、頭が、熱い。
「先輩と、毎日会えるんだ…」
そのあとの授業は全くもって身に入らなかった
─。