僕の声を聞いて
今まで、僕の本性を気付いた人はいなかったし、気付かれないようにしてきた。
なのに、今彼はなんと言った?
「人生が楽しい?」かって、まったく楽しくない。
そんな解答を返してほしいかのように彼は、僕にそう言ったのだ。


おかしい……。僕が彼と出会ったのなんて、まだ数日のことで交わした言葉なんて、他愛のない一言二言なのに。

何故、僕が自分にも人にも嘘をついていることに気付いた?

気付くはずがない。僕だって、自分が言っていることは本心だ。と言った瞬間は思うほどに僕の嘘に気付けるはずがないのに。


「お前、今なんでバレた。とか思ってるんじゃないの?」

思考の波に呑まれている私を現実に戻すかのように彼は口を開いた。

「そんなこと……“私”は思ってな―――「んなわけないよな?」

そこで、彼の表情を見るとその顔は厭らしい笑みを浮かべている。
それは、先ほど―――というか、今まで何度か顔を合した時も、他の人間といる時にも彼が見せているような人当たりの良さそうな表情ではなく、見たこともないような表情だ。


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