変わっていく~君と私~


「結奈。アレ、やってきた?」



結奈は口をポカーンと開けて仁王立ちしている。



アレとは、美術の宿題の事。



美術の先生。藤岡先生は誰でも怒る。



社長令嬢でも、どこの社長でも。




別に藤岡先生が特別すごい訳ではない。


けど、藤岡先生には勝てない。




「ひ……ひな…あたし、具合悪いから保健室行くね…?」




結奈の顔がみるみる真っ青になる。



「うん。2時間目からは出て来るでしょ?」



「あ…当たり前でしょ…。授業位は出ておかないと…。」



それだけ言うと結奈は真っ先に保健室へと向かって行った。



「ふぅ…。」


薄いため息。



毎日がつまらない。


あたしの将来は自動的にすべて決まる。



何も考えなくてもいい…勉強以外は…。




「キーンコーンカーンコーン…」



やばい。予鈴だ…。



急がないと…。




「あっ!やべぇ!予鈴鳴ったじゃん!!」



そんな声があたしの後ろから聞こえた。



「タタタッ…」


近づいてくる足音。何をそんなに急ぐ必要があるのか。



遅刻したって担任の先生に位大目に見てくれるもの。



「ふぅ…。」



またため息。



「ドンっ」



そんな渋い音と共にあたしの体は地面に叩きつけられた。


「痛った…。」
「痛って…。」


声が重なった。



地面に叩きつけられたせいか、すぐには立てなかった。



手の平からは血がにじんで見えた。




「あ、ごめん!ちゃんと前見てなくて…。立てるか?」



あたしにぶつかった男の子が顔の前に手を出す。



「別にいい。こんな傷…。一人で立てる。」



あたしの言葉にホッとしたのか、柔らかい笑顔を見せる。



何て、良い笑顔をする人だろうと思った。



でも、こんな生徒一度も見たことない。




何ていうか…。少しチャライと言うか…。



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