変わっていく~君と私~
「何?俺の顔なんかついてる?」
そう言って顔を近づけて来た。
「なにも…。早く行かなくて良いの?遅刻するよ?」
あたしは彼に目を合わせる事無く言った。
立つとひざからも血がにじんでいた。
足を少し動かすだけでヒリヒリする。
こんなケガをするのはいつぶりだろう…。
「…。ん。乗って」
そう言って彼はしゃがんで背中向けてきた。
「な…なに?」
「ひざ、血出てるし。俺がやったんだから責任は俺が取る」
多分、背中に乗れって事だよね…。
あたしは彼の大きな背中に抱きつく。
スッと彼は立つとあたしのカバンも持ってくれた。
「何年何組?」
「…。東棟の1年B組。」
すると彼は小声でオッケと言った後、信じられない速さで下駄箱まで運んでくれた。
「ゴメン。俺ちょっと用事あるからここまでしか送れない。」
申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる。
「良い。ここまで運んでくれて…あ、あり…がと」
「ん!じゃあな!」
そう言って彼は西棟の校舎への道へ行った。
腕時計を見るとあと2分でチャイムが鳴る時間だった。
1分以内でここまであたしを背負ってこれるなんて…。
そういえば、名前も聞いていなかった。